目的、目標および範囲

Goals, Objectives and Scope

 どんなに落ち込んでいる生徒に対しても、わたしは、必ず、「現状の学力や成績を気にしないで、自分が望む目的を持つことだ」と励ます。どんなに現状の成績が悪くても、可能性が残っているかぎり、あきらめる必要などない。もちろん、その高校が定めた入試ルールで、どうにもならないこともある。それでも、目的がわかれば、ギリギリまで可能性を探ることができる。時間的な余裕があればあるほど、可能性が高くなるので、できるだけ早く目的を持つことが重要だ。
 さて、ここに、中学1年生で、1学期の通知表評定の合計が24、定期テストの総合順位が200名中150位というC君がいるとしよう。お父さんといっしょに三者面談に来て、「ぼくは、お父さんが卒業したK高校に行きたい」と自分の希望を表明した。
 わたしが面談担当であれば、「よし、わかった。K高校に行きたいなら、さっそく計画を立てて実行しよう」と答える。「ただし、わたしがいうことを、必ず、実行することが必要だ」
 C君の場合、まず、目的は「K高校に合格すること」である。
 つぎに、目的を達成するための計画は、目的までの道筋を示すものでなければならないから、数値的な明確さや方向性が必要になる。
「K高校の受検者に成績で並ぶためには、現在の通知表評定を24→38以上、君の中学校であれば、定期テストの総合順位を150位→30位以内、目指すべき数値と方向性は、こうなる。キミの優先順位は、なんとしても、通知表評定を上げることだよ」
「わかりました」
「よし、これで、通知表評定38以上という目標が決まった」
「目的がK高校合格、目標が通知表評定38以上ですね」
「そう。中3になったら、入試に対する得点力が、目標に加わる」
 ここで「目的」と「目標」を説明しておこう。まず、「目的」は、勝利とか合格とか成功のような、君が目指す最後のところを意味する。英語では、purpose、aim、goalなどになる。つぎに、「目標」は、数値などであらわせる具体的な指標を意味する。英語では、ずばり、targetである。
 つまり、「目的>目標」ということだ。(しかし、目標も目的になり得るから、定義はややこしい)
 C君の場合、「K高校合格」が目的であるから、「通知表評定38以上」が目標になる。
「キミは、まず目標を達成しないと、目的にむかえない。目標の範囲は、通知表評定と定期テストの得点。現在の観点別評価では、三段目が、意欲・関心・態度の評価だ。キミは、すべての科目で、三段目の評価がAになるように取り組む。つまり、真剣に授業や宿題や課題に取り組めばいい。つぎに、定期テストで、いい点がとれるように学習する。この順番でしっかりやれば、通知表評定は、必ず、よくなるよ。順位は、後からついてくるから、気にしない。合格に必要なのは、通知表評定と入試に対する得点力だ」
 この中学1年生は、通知表評定がみるみる改善し、中学3年生になるころには、通知表評定40以上、定期テストの総合順位も20位以内になっていた。そして、入試に対する得点力をきたえて、目的のK高校に合格した。
 キミたちは、まず目的を持ち、つぎに具体的な目標を持つことが必要である。
 新年度を飛躍の一年にしよう!

山手学院 学院長 筒井 保明